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松尾寺と、こんぴらさんの奥の院「箸蔵寺」のこと

 友人が「はしくら寺へ行こう」と言ったのです。ウッ、それってどこかな?などとまことに頼りないながらも、くっついて行くことにいたしました。
 瀬戸大橋線から土讃線への列車は琴平止まりでした。聞けば乗り換え時間までに何と2時間近く時間があります。それでこれ幸いと金刀比羅宮の参道を散策、松尾寺へと足を伸ばしました。この日こんぴらさんの参道は、初詣の人たちでいっぱいでした。

元は「こんぴらさん」と松尾寺は一体だった

 金毘羅さんを降りた少し東側に小さなお寺さんがあります。この松尾寺は江戸期までは「こんぴらさん」と一体で、山上にあってずっと「金毘羅大権現」を祭ってきました。明治の廃仏毀釈で、無理やり金刀比羅宮と分離され、山上からこの下に下ろされたのです。そして今ではこの場所で「金毘羅大権現」を祭っているのです。
 友人は金毘羅とインドの神「クンピーラ」との関係などに興味があるらしく、盛んに質問していました。
 聞けば、明治初期に「こんぴらさん」にあった木の仏像類は、全部燃やされてしまって、今ここには金属製の仏像しかないということでした。えっ、そうすると、岡山市西大寺観音院にある金毘羅大権現の仏像は、ここから避難したということですから、金属製のものかな?また1つ興味がわいてきました。

 尚、山上の「こんぴらさん」は明治以降は「金刀比羅宮」となり、祭神に大物主神と崇徳天皇を祀るようになったそうです。

 琴平駅前にある金毘羅高灯篭を見ながら次の電車を待ちました。昔はこの灯が海上から見えたと言います。途中に高い建物も無く、空気も良く澄んでいたのでしょうね。


 松尾寺内部の様子    金毘羅高灯篭

弘法大師と金毘羅大権現

 「はしくら寺」とは「箸蔵寺」と書くそうです。箸蔵寺は、この地で弘法大師が金毘羅大権現と出会われ、「お箸を使うもの全てを救いましょう」というお告げを受けて金毘羅大権現の仏像を彫られて作られたお寺だそうです。今でもお箸初め、箸供養などの行事をやっておられるとか。そのため「こんぴらさんの奥の院」として長く親しまれているそうでした。
 土讃線の阿波池田駅から2つ手前の駅が箸蔵です。讃岐山脈の南側の斜面、吉野川を見下ろす山上にありました。JRの駅から少し歩いたところからお寺の境内までロープウエーが出ています。ところが友人は「歩いていこう」と。えっ!!
 でもかたわらに古い参道がありました。見れば「約2キロ」の看板も。それなら、昔の風情を見ながら登るのも一興と歩き始めました。おや、ところどころで広い道に出ます。なんだ、車でも上がれるのか?聞けばお寺の位置は標高600mだとか。なるほど、きつい急坂が続くはずです。真冬でも十分な汗をかかせていただきました。で、あっ着いたかなと思ったら、まだまだ長い道が・・・ということを繰り返しながら、やっと駐車場まで到着。いい形の仁王門が待っていました。吉野川に水運の目印になったという高灯篭をながめながら道が続きます。

「こんぴらさんの奥の院」として

 そこからも、まだまだ坂や石段がずっと続きます。屋根つきの橋(鞘橋)のところでは、烏天狗や役の行者像が出迎えてくれます。「やはりここも修験道のお寺さんなのだ。」と友人は感心しきりです。この参道には大きな石の鳥居も2つありました。まさに神仏混合です。
 やっと護摩殿の前に出ました。このお寺さん、四国別格20霊場第15番になっています。かっては『こんぴらさんの奥の院』としてお参りがひきもきらず、境内にはいつも人があふれていたとか。「四国88箇所を決めるとき、それに入らなくても十分なお参りがあるから断ったという話も残っています」と説明されました。
別格20箇所は、地図を見ますと、吉野川流域から松山方面へと、あの日本を貫く大地溝帯沿いにその多くが展開しているように思われました。
 護摩壇の横には平成初年に完成した「ぼけ封じ四国33観音霊場第28番」の観音像(馬郎婦観音)が姿を見せています。よせばいいのに、ついつい「四国別格霊場」「ぼけ封じ四国33観音霊場」の納経帳を買い求めてしまいました。いつ回れるかまったく予想もつきませんが、今日ここへ来た記念です。


 護摩殿        観音像

すこぶる立派な本殿

 本殿は石段を上がった上の段にありました。3段に連なったすこぶる立派な建物です。江戸末期のものだそうですが、軒の彫刻の素晴らしさもまた目を見張らせるものです。友人も「これだけのものは岡山には無い!」としきりに感心、カメラに収めていました。横には大きな天狗の面もあり、このお寺さんの特徴を主張していました。なお、ここの本尊は弘法大師が彫ったという金毘羅大権現だそうで、開山以来の秘仏として歴代の住職も見たことが無いというお話でした。
 東にはここで最古の建物と言う観音堂があり「阿波33観音の1つ」ということでした。

 今日は松尾寺から箸蔵寺へと、期せずして古い「こんぴらさん」を訪ねまわったことになりました。帰途はロープウエーをつかいましたけれども。(2007,1)

PS:金毘羅大権現は薬師如来を守護する「薬師十二神将」の筆頭の仏さま「宮毘羅(くびら)大将」(インド名クンピーラ)といわれ、ワニの化身だそうです。