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鎌倉の旅

  高校の修学旅行以来の鎌倉です。一度は来たかった古都鎌倉、今回はたっぷり1日半、楽しむことができました。

鎌倉最古の宿、あの芥川龍之介と

 まずは、宿泊した宿のことから。鎌倉駅のすぐ西隣にある「ホテルニューカマクラ」、大正12年生まれと言う鎌倉最古の宿でした。なるほど、大正ロマンの息吹を感じさせる、築80年の素敵な建物です。「ひたすらおっとりと」というとおり、特別なサービスはありませんが、素泊まり4,200円~という安さと、何とも落ち着く雰囲気、ついつい2泊もしてしまいました。
 ここはかって、文豪芥川龍之介と、歌人岡本かの子が運命的出会いを果たしたところでもあるそうで、大正文化への夢が広がり、この旅レポートの筆もすすみます。
 えっ、80年後の私の出会いは?ですって・・・。な、内緒内緒・・・

そして、鎌倉最古のお寺、杉本観音

 えっ、なぜ鎌倉へ?ですって。もちろん坂東33観音巡りのためです。この鎌倉、何と1番から4番まで4ヶ寺も集まっているのです。
 最初は1番の杉本寺。鶴岡八幡宮から東へ歩いて15分くらいです。天平時代創建の鎌倉最古のお寺というだけあって、表には写生をするグループが10人くらいもキャンバスにむかっていました。本当にいい雰囲気です。正面の古い石段は磨り減って危険なので、横に通行用の石段が作られているほどです。
 かやぶきの小ぶりの観音堂の奥には、3体の秘仏11面観音が納められ、遠目に見ることができました。それぞれ行基菩薩、慈恵大師、恵心僧都の作だとか。さすがにどなたも私でも知っている有名人です。それ以上に驚いたのは、あの仏師として後世に鳴り響く運慶作の4仏があったことでした。こちらは「本尊前立11面観音」をはじめ、「ふーん、これが運慶か!とばかりに間近にゆっくりとながめる事ができました。何と山門の仁王様まで運慶でした。
 小さいけれども杉本寺(杉本観音)、ゆっくりとどまって、雰囲気に浸れるやさしいお寺さんでありました。

参拝続く、鶴岡八幡宮

 JR鎌倉駅のすぐ前から桜並木の参道が続く鶴岡八幡宮。平日のこの日も参拝客が続いていました。修学旅行の生徒たちもあちこちに見受けられます。参道と平行している「小町通り」という商店街も人並みが続き、最近には珍しく活気あふれる商店街でした。
 おっと、もちろん古いレトロな「ひら乃」というラーメン屋さんも美味しかったです。
 新築の社殿にお参りし、咲き誇る庭のボタンを鑑賞、あいかわらず古都での静かな時が流れていきます。

北条政子の墓、3番安養院

 鎌倉駅から南へ少し歩くと、坂東3番安養院へ着きます。田代観音とも言われ、樹齢700年の槙の木がありました。
 裏手に回ると、何とあの尼将軍北条政子の墓と伝えられる宝篋(ほうきょう)印塔が(右写真)。一見平凡なお寺さんのようでしたが、どうしてどうして見逃せないお寺さんです。
 ここからもう少し足を伸ばせば「安国論寺」へと達します。名前の通り日蓮が立正安国論を書いたお寺だそうです。日蓮がこもった小庵など、ここも歴史をよみがえさせる素敵なお寺さんでした

安養院安国論寺

逗子駅から歩いて「岩殿寺」

 この日の予定外でしたが、足を伸ばして逗子駅から20分ばかり歩いて、坂東2番岩殿寺へと回りました。団地の中を通り抜け、山の中へ石段を昇ります。静かなとってもいい雰囲気でした。
 源頼朝のピンチを救った観音様ということで、源氏の信仰が厚かったようです。景色もなかなか良い観音様でした。

45年ぶりの、鎌倉大仏さん

 鎌倉は江ノ島電鉄(エノデン)というなかなか素敵な電車が走っています。それに乗って西へ。長谷駅で降ります。鶴丘八幡宮付近と並んで鎌倉の2大観光地は、長谷観音と鎌倉大仏です。
 まずは高徳院の鎌倉大仏へ。高校の卒業旅行で来たはずですが、45年前ではまったく記憶にありません。第一印象はその大きさよりも「おや、この大仏さんは伏目勝ちなんだ。何だかやさしい雰囲気」ということでした。
 「まだ空気が澄んでいたころの作ですから、今の大仏よりもやさしいんじゃあないでしょうか」直前にカメラをすえ、たびたびシャッターを切っておられた人の解説でした。なるほど、大仏の表情が大気汚染と関係があるとは、さすがの私も気が付きませんでした?。
 ここで気が付いたことの1つ。門前にあった狛犬2体がいずれも「アー」でした。見ると1980年に台湾から寄贈されたもの。そうすると台湾の狛犬は両方とも「アー」なんですね。日本の狛犬の「アー、ウン」がどこから始まったのか、私の興味はますます増すばかりです。
 写真左は大仏さんの胎内です。

金色の巨大観音像-長谷観音

 坂東4番長谷寺。実は坂東33観音霊場には「長谷寺」というところがこの4番をのほか、6番、15番と3ヶ所にのぼります。いずれも大和の長谷寺と因縁の深いところ。
 ここは本尊の11面観音が、大和長谷寺の本尊と同じ木から切り出されたものと言われているそうです。全体に金箔が張られ、また見るからに細かい細工がされています。新しい光背を別にしても、金箔の輝きがあまり失われていないのには驚きました。本当に1,000年以上の時を越えてきたのでしょうか?。聞いてみましたが、すす払い以上のことは記録的にもなされていないのだそうです。すごいものです。
 すぐ目の前でじっくりと鑑賞できるこの長谷観音巨大金色本尊、どれだけ多くの人たちが見てこられたのでしょうね?

 800年以上前、源頼朝が初の武家政権を打ち立てた鎌倉です。歴史遺跡も多く、また海も近く住みやすいことから、戦前から多くの人たちが好んで住んだという鎌倉。たった2日の滞在でしたけれども、なかなかに幸せに過ごさせていただきました。

 とりわけ芥川龍之介ゆかりのこの宿「ホテルニューカマクラ」、歴史好きのわたしにとって最適のレトロなお宿でありました。(2007,1)