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あこがれの『鬼が島』
~香川県女木島の旅~
 「鬼が島」・・・。子供のときから馴染んだ名前ではありませんか。桃太郎がいぬ、さる、きじをお供に行ったというあの鬼が島です。大人たちは「あそこへ行くとな~、大きな洞窟があってな~」などと旅行談をいつもしてくれました。私にとって鬼が島とは、小学校のときから、一度は行ってみたい「あこがれの地」のひとつだったのです。しかし何とはなしに、行ったことがない地に変わってしまっていました。
 それが、突然に機会が訪れたのです。

高松港からフェリーで15分

 鬼が島とはもちろん高松市女木島のことです。どうやら高松港のすぐ前に浮かんでいて、フェリーがあるようなのです。元職の業界OB会が企画してくれました。そして
 「行ってみたい。行ってみたい。行ってみたい。」少年の心が突然復活してしまいました。
 仕事を休んで、JR瀬戸大橋線茶屋町駅から瀬戸大橋を渡って・・・の人になったのです。高松駅は最近変わってしまっています。新しいビルばかりで、どこがどうなっているのか??・・・なんてことに気を使う余裕もなく、「雌雄島海運」という変わった名前のフェリー会社の小さいフェリーが出航していました。

形の良い三角山が

 左になだらかな丘、そして右には形の良い三角山が。外見からもけっこう風情のある島です。「あの右側の山のてっぺんに(洞窟が)あるんだ。」先輩たちが教えてくれます。なんだか3年生と6年生の関係が復活しているではありませんか。あ、もちろんデジカメのシャッターを切るのに忙しい、ませた3年生ですけれどもね。
 港に着くと、さっそく登山がはじまりました。188mの山頂まで「2.5キロ」と可愛い石鬼が教えてくれます。あれっ、鬼っていつのまにこんなに可愛くなったんだ??なんて思いながらの散歩です。「春は名のみ~の・・・」風の寒さが強まったこの日。総勢27人はけっこうてんでばらばらに山頂へとめざします。

2000年前の人工の洞窟です

 ここでも可愛い鬼たちが迎えてくれました。早速洞窟探検です。案内人のおじさん「ここは2000年前の人工の洞窟です。これは世界でも珍しい」と。そこでむくむくと頭をもたげる「趣味の考古学」
 「あのー、2000年前って、どうしてわかったんですか?発掘して土器とか見つかったんですか?」2000年前だと日本では弥生時代真っ最中です。硬くて薄い土器のはず・・・。
 案内のおじさん「・・・・」
 あ、し、しまった。これはしてはいけない質問だったんだ!どうやら少年の心は難しいものでした。

香川の鬼退治物語とは

 この女木島洞窟を中心に香川県にも桃太郎伝説が伝わっているそうです。「岡山で有名な吉備津彦の弟がこの香川に来ていて、住民が海賊に苦しんでいるのを知り、イヌ、サル、キジを率いて鬼を征伐した。犬は備前の犬島(岡山市)、サルは陶の猿王、(綾南町)、キジは雉ヶ谷(鬼無町)に住む男子だった。鬼が住んでいたのがこの女木島だった。」という物語だそうです。
 「この物語はかの菅原道真が讃岐の国司だったころ、この地に伝わる昔の伝説を掘り起こして、日の目をみた。」
 「この洞窟が昭和6年に発見されて、桃太郎伝説と女木島が結びつき・・・」
 えっ、昭和6年??、それと菅原道真って、、、すごい矛盾ではありませんか?う~ん、いろいろとくっつけるものですね。
 でもともあれ、洞窟自体は巨大なもので、興味津々たるものでした。

お城の形をしている大洞窟・うん!!梁山泊??

 「ここの洞窟はお城の形をしています。中国の洞窟と同じで、入り口は敵が侵入できないように狭くなっていて、内部は戦いやすく逃げやすいように、広くて、いくつもの洞窟にわかれています。」
 広さ4000㎡、奥行き400m。すごいです。さすがに人工の洞窟。でも本当はいつごろどんな人たちが作ったんでしょうね?いちおう海賊の住みかとなっていますが、海賊というのは平安朝の藤原純友(10世紀)以来なのかな?いや倭寇ってもっと早くから?
 でもこんな島に砦を作って海賊?海軍?として活躍するのは、やはり10世紀以降じゃあないでしょうか?そうすると1,000年ほどまえ?
 桃太郎?が強盗団よろしくこの島へ乗り込んで、略奪をはたらくのは??

 私がここで思い浮かんだのは、なんとなく「水滸伝」です。梁山泊を想像させられる洞窟ではありませんか。水滸伝は中国の北宋時代の物語です。そうすると10世紀というのとダブりますね。
 「日本の梁山泊にこもる英雄たちが、最初は征伐に来た藤原純友と闘い、あとでは同盟して中央政府に反旗を・・・」想像の世界はこれくらいにして、おあとは小説がよろしいようで・・・。

女木島は絶景でいいところでした

それにしても洞窟のすぐ上の展望台からの眺めは絶景でした。お隣の男木島(写真左)も形の良い山形をみせています。、帰りの山道の桜はまだつぼみが固く、山桜のみが咲き誇っています。
 「メモ片手 一句浮かんだ ビ、ビ、・・・」思わずつぶやくわれに、お隣から「美女一人というの!」ときつ~いひとこと。「ひかんざくらとひがんざくらって違うらしいですよね・・」なんて意味不明な反撃を試みるのは、元職の職業病?いや悲しいサガなんでしょうね。

 「ここはいいところだなー、桜の咲くころまたゆっくりきたいなー。」友人のつぶやきにもっとものうなずきをかえしながら、なだらかな坂道を歩く一日でした。(2010,3)