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旅の3日目。カトマンズ西方200キロにあるポカラから私たちは空路ヒマラヤ山脈を越えてジョムソンというところへ入った。ここはもうムスタンになり、アンダームスタンとしてムスタン王国への玄関口である。ここではMDSAという日本のNPOが農場を経営し、ムスタン全域へ野菜、果物、鶏肉、玉子、牛乳、魚などを供給しているというところである。実はレストラン『麦』はMDSAの岡山支部を兼ねていて、今回の旅行の目的の一つは、この農場見学と、MDSA主催者の「近藤のじさま」に会うことだったのである。この項、少々長くなることをお許し願いたい。
曲芸飛行のように着陸したジョムソン空港前の広い道路。両側にはずらりとホテルやゲストハウス、商店などが並ぶ。そう、ここはムスタン地域(ムスタン王国・18,000人)の玄関口であると同時に、中央ヒマラヤのアンナプルナ連峰周辺をトレッキング(山歩き)する主要な基地ででもあるのだ。
そのカリ・ガンダキ川を東へ渡る。一本橋をこわごわと全員何とか渡りきった。崖の上にあるシャンの村を見上げながら進むと、前方に見えていた唯一の緑地帯、そこがMDSAの農場だった。入り口に宿泊施設もあるようで、日本からの若い男女が泊り込んで奉仕活動に取り組んでいた。その横がりんご園。みごとなりんごの木が続き「食い散らかしていいですよ。」の声に、空腹だった私たちは後先考えずにりんごにかぶりついていた。真っ赤なりんご、少し黒いりんご、黄色いりんご、みな無農薬で有機肥料だ。美味しいこと美味しいこと。 広大なりんご園の隣では、牛舎、鶏舎があり、世話をするネパール青年家族が住み着いていた。「これを見てくれ」とばかりに案内する青年の顔は輝いている。彼の工夫と努力で玉子を温め、多くの雛鳥が生まれたばかりだという。すごい!。
夕方になりかかったが、どうしてももう1つのプロジェクト養魚場を見ようと次へとたどる。全盲のOS夫人はさすがにここから馬で引き返す。
やっと養魚場に着く。おお、けっこう大きな養魚池だ。この池から流れ出る排水がさっきの植林地帯へ続いている様子。おおきな池には鯉がいるそうで、「こっちはニジマスです。これは私が新潟県に行って研修受けて持って帰ったんです。」世話役のネパール青年が説明する。エサヘ飛びつく姿を見ると、10数cmもあるだろうか。幼魚が躍動する姿に感心しながら向こうを見ると、何やら囲いのようなものがある。
行ってみると傍らにあるのは明らかに稲束。干してある。ポリエチレンの囲いの中をのぞいてみると水田だ。刈り取りの終わった稲株が、日本の水田と全く同じに並んでいる。2700mの高地の水田。囲いの中とはいえ、これは私にとってこの旅一番の感激であった。
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